前回「高菜のせ角煮ごはん」のレシピを書きましたが、青高菜がなかなか手に入らないというご意見がありましたのでお教えたします。当店では、西荻窪北口にある八百泰さんにて予約して購入しています。夏場は店頭に置いてないお店でも、あらかじめお願いすると市場で仕入れてきてくれるところがありますので、ご近所の八百屋さんで頼んでみてください。
さて、ようやっとオープンの頃のお話です。5階まで階段でフローリング材を運び入れたこと。漆喰を塗るよりも、きれいにヤスリでこする下処理。家主さんの荷物を保管するために真冬の深夜に屋上で物置を組み立てて荷物を納めたこと。その時風邪をひいていたこと。テラスへ出る手作りドアの鍵を親方が逆につけて閉められなかったこと。全てがたいへんな作業でしたが、今思い返すと全てとても良い経験となりました。
開店前日に、ぎりぎりで保健所の認可を取れた時には皆で放心してしまいましたが、まだまだ内装が終わらず気合を入れ直しての作業。結局最後のフローリング塗装はあきらめましたが、その後の経年ですごく良い味わいの色になっていくのでした。ちゃぶ台には接ぎ木をしてテーブルに仕立て直し。時間がないための苦肉の索が、後日雑誌のインテリア特集に何度も取り上げられることになるとは、その時は夢にも思わなかった。オープン当日の夜は知り合いを招いてのオープニングパーティーをしました。狭い店内はごった返し、入店できなかった方も。
ドリンクやお食事のサービスも全て初めてのことなので、何が何だかわからないまま嵐のようにパーティーは深夜まで盛り上がります。みなさん楽しんでいただけたようで、とりあえずホッとして1日目の夜は無事に完了。
さて、翌日いよいよカフェ開店本番です。とはいえ、屋上にある空中店舗に通りすがりのお客さんがやってくるはずもなく、知り合いがポツポツと来てくれるだけで、カフェは閑散としていました。でも思い通りの自分の店ができた満足感からか、不思議とくよくよすることもなく、のんびりと毎日は過ぎていきます。そんな時期に来てくださったお客様の一人が東京カフェマニア主催の川口葉子さんです。カフェや喫茶店についての著作も多数出版されているカフェ好きでは知らない人がいないという有名なライターさん。あいにくこちらはそんな方とは知りもせず、頻繁に来てくれる、もの好きなお客様(失礼!)としか認識していませんでしたが、ある雑誌で彼女がクワランカを紹介してくれたことから、お客さまがだんだんと増えてきたのです。
その時の記事を川口さんの了解を得て転載させていただきましたので、ぜひともお読みください。こんなふうに書いていただいて本当にクワランカは幸せな店ですね。そして、西荻窪、吉祥寺と移転するたびに訪れてくださりありがとうございます。しかし、あの頃は本当に暇な店だったんだな〜 笑
MUTTS 2001年発売号(マガジンハウス)掲載