2015年7月10日金曜日

カフェほど素敵な商売はない(7)

スローペースで続けている「カフェほど素敵な商売はない」ですが、15年間のあれこれを書き終えるのに一体どのくらいかかるのでしょうか? 読んでくださっている方に飽きられても困るので、今回は物件獲得までを一気に紹介します。

 出産とほぼ同時に会社を退職して産休に入りましたが、まだ小さい娘を抱っこして物件探しをして周りました。検討した場所は、代官山、江古田、原宿、表参道、下北沢、そして渋谷です。江古田以外はよく通っていた街でした。どうして江古田をチェックしたのかは今となっても謎。学生街の喫茶店でもやるつもりだったのかなぁ?
 いずれも繁華街で、駅周辺の物件は家賃50万円、保証金500万円からが相場でした。もちろん手が届かないので、人が住んでいなさそうな古い民家(古民家などという洒落たところではなく、ただのボロ家屋)などの空き情報を調べたりも。近所の人に直接聞いたり、登記簿を閲覧するなどの方法があります。しかし廃屋同然の家屋でも、当然ながら手付かずにある理由があるのです。じつはひっそりと人が住んでいる。大企業の再開発予定地になっているetc..。繁華街のいい場所なら、当然誰かが目をつけていて、それでもかなわない場合のみ放置されているものなのですね。出発点に戻り不動産屋を訪れると、渋谷、原宿、恵比寿の3箇所の不動産屋で紹介された商業ビルが浮かびあがります。渋谷駅より徒歩5分。センター街にあるアワーズビル。2F、3F、4Fのほとんどの店舗が空いているとのこと。家賃は20万〜30万円くらい(当然階下が高いです)。保証金10ヶ月分。
 もうここしか条件に合うところは無いので早速内見をしたところ、なるほど確かにセンター街にはあるものの古ぼけていて目立たない外観。レトロモダンなどとは程遠い中途半端なビル。そしてどのフロアーのテナントも狭くて薄暗く陰気な印象。どうやらどんな店が入っても長続きしていないようでした。風水的にもなんだか最悪そう…。しかしもう他を当たっている余裕は無い。窮地に追い込まれた私の前に4Fからづづく階段がふと目に入ったのです。
 そこには屋上がありました。頼み込んで屋上を見せてもらうと、給水塔やらキュービクル(高圧受電設備)などがあちこちにある中に、ちいさな掘立小屋がありました。そこは、ビルのオーナーのお父さまが生前に事務所として使っていたところで、雀荘として使用していたこともあるとのこと。

 その古ぼけた木造の小屋を見た時の「ここしかない!」というひらめきは一生忘れることはありません。すぐさまビルのオーナーに直談判。すんなりと、とはいきませんでしたが、なんとかカフェとして賃貸契約に漕ぎ着けました。
 8畳ほどの小屋とテラス席。屋上には様々な設備があり夏や冬は使用できないだろうということで、現地の坪単価 × スペース − 夏と冬の数ヶ月分 = 家賃 相談の結果、家賃と共益費で20万円を下回る月が使用料金に決定します。保証金はやはり10ヶ月分。そしてもともと空き小屋なので、内装準備期間は家賃が発生しないということに。これはど素人にとっては大変ありがたい配慮でした。廃屋をリノベーションするのにどのくらいの期間が必要かさっぱりわからなかったのですから。
 かくして、なんとか都心にありながらも喧騒を忘れることのできる場所に一歩近づくことができました。でもそこには、ガスも水道も通ってなかったのですから、かなりの無茶をしましたよね。床を全部はつっての下水工事、詰まりを警戒して100万円近いグリーストラップを設置、5階までプロパンガスの引き込みと内装以前に大変な設備投資が待っていました。やはりここ一番の時に必要なのはひらめきと度胸、かな(苦笑)。
 つづく

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